ハロウィン強盗団を退治しろ!-SIDE:雅

 「ハロウィン強盗団?」
 氷愛様が帰ってこられるなり、奇妙な事を仰られました。
 「うむ、ちと領事館で頼まれてのぅ…」
 きっと横暴なクランマスターが無理矢理頼んだに違いありません。
 まったく、氷愛様が断れないのを良い事に…。
 「どのみち実際に苦情も来ておるからのう。見て見ぬ振りもできないじゃろう?」
 流石、氷愛様…!
 見知らぬ人の事を、それほどまでに考えていたなんて…もう感服です!!
 「手伝ってくれるかえ… 雅?」
 私は即答します。
 「はい、もちろんです。」


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 「で…これからどうすんだよ、姉貴? 漠然と警護する…とか面倒くさいのはゴメンだぜ?」
 雛好様が早速、文句を言ってきました。
 氷愛様が、何も考えてないわけない…
 「うむ、どうしたら良いのじゃろうな…?」
 …考えていませんでした…どうしましょう…。

 トントン

 不意に肩を叩かれました。
 「都、どうしたんですか?」
 都は路地の先のほうを指差してます。
 「そちらに何かあるのです…か…?」
 目をこすって、もう1回見てみましたが…やっぱり変わりません。
 この街は初めてですけど、よくある風景です…多分。
 オバケが…隠れてました…そりゃもう、物理的に。
 「っつーか、隠れきれてねぇし… 見えてんぞ…アレ…」
 オバケの格好をしてなければ、隠れていたのかもしれませんね…。
 「とりあえず、確保しておこうかのぅ…」

 ものすごく、あっさりと捕まえられました。


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 「さて、尋問を始めましょう。」
 と言ったはものの…喋られるでしょうか…?
 雛好様がやりすぎてしまいました。
 ちらりと雛好様を見ると、氷愛様に怒られています。
 回復するまで待っていても良いのですが、このような些事で氷愛様の時間を割くのはもったいないです。

 「仕方ありません、最後の手段を使います。
  申し訳ありませんが…都以外は席を外していただけますか?」
 「あ?何で俺と姉貴が出て行かないといけねぇんだよ?」
 「私は織守の当主ですから…意識の無い方から情報を集める術を心得ているのです。ただ…」
 「ただ、なんじゃ?」
 「お恥ずかしながら、心得てはいるものの不得手な術でして…不確定要素を減らしたいのです。
  都はその手の術に耐性もありますし…その、サポートも心得ていますので。」
 「そういう事なら仕方ないのぅ…。行くぞ、雛好… 別の部屋で説教の続きじゃ。」
 「痛ぇよ、姉貴!耳を引っ張るんじゃ…!!痛い痛い痛い痛い…。」

 これで大丈夫でしょう…多分。
 「さて、久しぶりに使いますが…上手に歌ってもらえると良いのですけど。」


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 「ふぅ、なんとか上手くいきました…。都、ご苦労様です。」
 仮面で表情は見えませんが、多分嬉しそうなんだと思います。
 …尻尾が揺れてますし。
 「欲しい情報は手に入れましたし、氷愛様にお渡しして…」
 「…………!!」
 突然、都が部屋の一角に斬りつけました。
 私は…驚いて固まってしまいます。

 「オレサマを見つけるたぁ…やるじゃねぇか…ヒャハハハハ!!」
 確か…私が所属してるクランリーダーのパーティーメンバーの方で…
 「……セクト……!!」
 雅が相手の名前を呼んで睨み付けています。
 むしろ、隙があるなら斬りかかろうとしているくらいに。
 「お面のアンタとは戦ってみてぇが…今は別仕事中でよぉ…。」
 「…別仕事、ですか…?」
 ようやく頭が動いてきました。とりあえずは、戦闘の意思はないようです。
 …警戒はしておかないと危険そうではありますけど。
 「おうよ。要するに今回の依頼人に途中経過を知らせる役だ。
  面倒くさいったらねぇぜ…。その場で強盗をもう1回殺せばいいじゃねぇか…幽霊なんだから…な。」
 確信しました。この人、絶対に犯人が幽霊だとは思ってません。
 幽霊なら倒して良し。幽霊のふりした人間なら”仕方なかった”で終わらせる気です。
 「…先ほどからいらしたのなら、私から報告するべき事はありません。
  用事も済まされた事ですし、お帰りください。」
 「そうさせてもらうぜ…。早めに帰らないとお館様が五月蝿ぇからな…。」
 言いながら、閉まっている窓に歩いていきます。なんで扉から出ないのでしょうか?
 「ああ、言い忘れる所でした。依頼人にこの用にお伝え下さい―――」


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 「雅、終わったかえ?」
 「はい、得られた情報は依頼人の使いの方に渡しておきました。」
 「…おお、そこまでやってくれたのか。雅は良い子じゃなぁ」
 氷愛様が労いの言葉をかけてくださいました。それだけで苦労が報われます…。
 「と言う事は、依頼は完遂かのぅ?」
 「おそらくは。後は…追って連絡があるまでのんびりしていましょう。
  ここの所、クエスト続きでしたから。」
 「そうじゃな…。お礼も兼ねて甘いものでも食べに行こうか?
  下で良い店を教えてもらってのぅ。」
 それに私は、こう答えるのです。
 「はい、喜んで!」


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「うぅ〜…俺、悪い事してねぇよなぁ…?」
そうそう…雛好様が合流されたのは、次の日の朝の事でした。

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