ハロウィン強盗団を退治しろ!-SIDE:雅
「ハロウィン強盗団?」
氷愛様が帰ってこられるなり、奇妙な事を仰られました。
「うむ、ちと領事館で頼まれてのぅ…」
きっと横暴なクランマスターが無理矢理頼んだに違いありません。
まったく、氷愛様が断れないのを良い事に…。
「どのみち実際に苦情も来ておるからのう。見て見ぬ振りもできないじゃろう?」
流石、氷愛様…!
見知らぬ人の事を、それほどまでに考えていたなんて…もう感服です!!
「手伝ってくれるかえ… 雅?」
私は即答します。
「はい、もちろんです。」
--------------------
「で…これからどうすんだよ、姉貴? 漠然と警護する…とか面倒くさいのはゴメンだぜ?」
雛好様が早速、文句を言ってきました。
氷愛様が、何も考えてないわけない…
「うむ、どうしたら良いのじゃろうな…?」
…考えていませんでした…どうしましょう…。
トントン
不意に肩を叩かれました。
「都、どうしたんですか?」
都は路地の先のほうを指差してます。
「そちらに何かあるのです…か…?」
目をこすって、もう1回見てみましたが…やっぱり変わりません。
この街は初めてですけど、よくある風景です…多分。
オバケが…隠れてました…そりゃもう、物理的に。
「っつーか、隠れきれてねぇし… 見えてんぞ…アレ…」
オバケの格好をしてなければ、隠れていたのかもしれませんね…。
「とりあえず、確保しておこうかのぅ…」
ものすごく、あっさりと捕まえられました。
--------------------
「さて、尋問を始めましょう。」
と言ったはものの…喋られるでしょうか…?
雛好様がやりすぎてしまいました。
ちらりと雛好様を見ると、氷愛様に怒られています。
回復するまで待っていても良いのですが、このような些事で氷愛様の時間を割くのはもったいないです。
「仕方ありません、最後の手段を使います。
申し訳ありませんが…都以外は席を外していただけますか?」
「あ?何で俺と姉貴が出て行かないといけねぇんだよ?」
「私は織守の当主ですから…意識の無い方から情報を集める術を心得ているのです。ただ…」
「ただ、なんじゃ?」
「お恥ずかしながら、心得てはいるものの不得手な術でして…不確定要素を減らしたいのです。
都はその手の術に耐性もありますし…その、サポートも心得ていますので。」
「そういう事なら仕方ないのぅ…。行くぞ、雛好… 別の部屋で説教の続きじゃ。」
「痛ぇよ、姉貴!耳を引っ張るんじゃ…!!痛い痛い痛い痛い…。」
これで大丈夫でしょう…多分。
「さて、久しぶりに使いますが…上手に歌ってもらえると良いのですけど。」
--------------------
「ふぅ、なんとか上手くいきました…。都、ご苦労様です。」
仮面で表情は見えませんが、多分嬉しそうなんだと思います。
…尻尾が揺れてますし。
「欲しい情報は手に入れましたし、氷愛様にお渡しして…」
「…………!!」
突然、都が部屋の一角に斬りつけました。
私は…驚いて固まってしまいます。
「オレサマを見つけるたぁ…やるじゃねぇか…ヒャハハハハ!!」
確か…私が所属してるクランリーダーのパーティーメンバーの方で…
「……セクト……!!」
雅が相手の名前を呼んで睨み付けています。
むしろ、隙があるなら斬りかかろうとしているくらいに。
「お面のアンタとは戦ってみてぇが…今は別仕事中でよぉ…。」
「…別仕事、ですか…?」
ようやく頭が動いてきました。とりあえずは、戦闘の意思はないようです。
…警戒はしておかないと危険そうではありますけど。
「おうよ。要するに今回の依頼人に途中経過を知らせる役だ。
面倒くさいったらねぇぜ…。その場で強盗をもう1回殺せばいいじゃねぇか…幽霊なんだから…な。」
確信しました。この人、絶対に犯人が幽霊だとは思ってません。
幽霊なら倒して良し。幽霊のふりした人間なら”仕方なかった”で終わらせる気です。
「…先ほどからいらしたのなら、私から報告するべき事はありません。
用事も済まされた事ですし、お帰りください。」
「そうさせてもらうぜ…。早めに帰らないとお館様が五月蝿ぇからな…。」
言いながら、閉まっている窓に歩いていきます。なんで扉から出ないのでしょうか?
「ああ、言い忘れる所でした。依頼人にこの用にお伝え下さい―――」
--------------------
「雅、終わったかえ?」
「はい、得られた情報は依頼人の使いの方に渡しておきました。」
「…おお、そこまでやってくれたのか。雅は良い子じゃなぁ」
氷愛様が労いの言葉をかけてくださいました。それだけで苦労が報われます…。
「と言う事は、依頼は完遂かのぅ?」
「おそらくは。後は…追って連絡があるまでのんびりしていましょう。
ここの所、クエスト続きでしたから。」
「そうじゃな…。お礼も兼ねて甘いものでも食べに行こうか?
下で良い店を教えてもらってのぅ。」
それに私は、こう答えるのです。
「はい、喜んで!」
--------------------
「うぅ〜…俺、悪い事してねぇよなぁ…?」
そうそう…雛好様が合流されたのは、次の日の朝の事でした。
to be SIDE-K