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買い物王選手権


 「あ〜… 平和っていいなぁ…」
 守備兵をしていたジョンは日向ぼっこをしながら何をするでなく立っていた。
 名目としては、『警備』…もっとも、今に限っては御飾りではあったが。
 買い物王選手権とかいうイベントのおかげで、敵国冒険者もなければ…危険なモンスターもいない。
 つまり…ただ、立っているだけ。
 何人かの冒険者が挨拶とともに街に入っていったが…それは彼にとってどうでもいい事柄だった。
 なぜなら彼は…敵国冒険者やモンスターに対して警備しているのだから。

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 土産物屋の店主は嬉しいながらも困っていた。
 買い物王選手権とやらのおかげで、高価な土産がどんどん売れていく…それはいいのだが…。
 「店主、もっと別の品はないのかえ?」
 「ご主人、もっと別の物はないのかしら?」
 「おっちゃん なんか面白いもの売ってない? …そーだなぁ 百人切りの魔剣とか!」
 「ねぇねぇ、もっと変わったお土産おいてませんかー!」
 どういうわけか、買って行く冒険者が日に日に切羽詰ってきている感じがするのだ。

 「おや、お主等は…今日は随分と調子が良さそうじゃな?」
 「貴方達ほどじゃないわ…秘訣を教えて欲しいものね?」
 「私はイマイチなんだけど…?」
 「僕は違う店に逃げ…いや、行こうかな…」

 こういった冒険者同士の腹の探り合いは日常茶飯事。
 下手すれば、戦闘直前まで行く事も日常茶飯事。
 今のところは戦闘にまではなっていないがそれもそう遠く無いと思われる。
 「…(買わないなら、早く帰って欲しいなぁ… 戦闘になったら、店は全壊だろうなぁ…)」
 そう思う店の親父であったが、冒険者が上客である事に変わりは無く…
 結局は、困った笑顔を浮かべながら嵐が過ぎるのを待つしかないのだった。

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 占い師シンシア・ヒルマンは困っていた。
 占いなんだから当たるも八卦当たらぬも八卦…精々が行動の指針程度にすればいいのに、このお客は…。
 「水難の卦って何だよ・・・!中途半端な教え方してんじゃねぇよっ!」
 「そう言われましても…そういう占い結果ですので…」
 「未来が見えるなら、もっと具体的に教えろって言ってるんだよっ!」
 どう言えば、このシマウマの獣人が帰ってくれるのか…とシンシアが考えている時にソレは起こった。

 ザバァ!!

 突然、バケツの水を引っ掛けられた…。
 当然…シマウマの獣人ごと。
 「誰だ、コレやったやつっ…!!」
 怒りに任せて、辺りを見回すが誰もいない。
 水は背後から…となると占い師は除外。
 外と当たりをつけると、物凄い勢いで飛び出して犯人を探しにいくのだった…。

 残された占い師はというと…
 「破滅の妖魔……大量の影………崩壊する秩序………撒き散らされる死……」
 何やら不吉な占い結果を虚空に向けて伝えているのだった…

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 「あ〜… 平和っていいなぁ…」
 守備兵をしていたジョンは日向ぼっこをしながら何をするでなく立っていた。
 名目としては、『警備』…もっとも、今に限っては御飾りではあったが。
 買い物王選手権とかいうイベントのおかげで、敵国冒険者もなければ…危険なモンスターもいない。
 つまり…ただ、立っているだけ…のはずだった。

 地面が揺れている気がする…嫌な予感がして、遠くまで目を凝らす。
 土埃が舞っている。
 …尋常な数で無い、何かが街に向かって進んできている…。
 彼は職務に忠実に、街に報告に戻ろうとしたのだが…。


To be continued...


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