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〜Alte Geschichte〜


アルカディアにあると言う冒険者が集う酒場…。
そこには…様々な冒険者が様々な用事で訪れる。
これはそんな奇妙な酒場のある一夜の物語…。

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 「わらわの過去が知りたい?」
 思わず大きな声を出してしまった…店中の注目を浴びる、少し恥ずかしい。
 「たいして面白い話などないぞえ…わらわ個人の事では…」
 …無駄な努力なんだろうと思いつつも、声のトーンを少し落して否定してみる。
 「そんな事ないわ。私はとても興味あるしね。」
 サイコロを弄びながら金髪の冒険者が言う。他の冒険者の様子を見ても同意しているようだ…。
 ほら、無駄な努力だった。
 「はぁ… で、何の話をしたら良いのじゃ?」
 事実上の敗北宣言。
 忘れたと突っぱねてもいいが、ボケ老人扱いされるのも癪だし…と心の中で強がっておくか。
 さて、何の話をしたものか…。

 ああ、自己紹介がまだじゃったな。
 わらわはライラ=シルバーロード。サイロンに籍を置く冒険者にして…吸血鬼じゃ。

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 コツーン、コツーン…
 人気の無い館に、私の足音だけが響く。
 無人の館のはずなのに監視されている気がして、どうにも落ちつかない。

 「まったく、なんで私がこんなことを…だいたい、怪物なんてねぇ…。」
 確か…子供がこの館で怪物を見たとかなんとか騒いだのが発端だったと思う。
 この館も廃棄されて久しいし、どうせ何かの見間違いだろうと、私が確認しにきた…んだけど。
 「誰かに付いてきてもらえば良かったかな…?」
 思わず弱音が口から出る。
 凶悪な怪物が多くなってきて、治安が低下してきているし。
 まだ日は高いはずだけど、館の中は真っ暗で心細いし。
 真っ暗なのは窓という窓の雨戸が降りている(ご丁寧に内側から鍵までかかっている)からだけど…。
 「辛気臭いったらないわね…。」
 今度は悪態。
 強がりとわかってはいるけど、言わずにいられない。

 そのまま、どれくらいの部屋を回ったのか数えるのも面倒になってきた頃…それを見付けた。
 「これって…人間の死体…?」
 干からびてミイラみたいになっている人…だったモノ。
 どれくらい日が経過したのかわからないけど、着ている服などはそれほど汚れていない。

 『廃棄されてる館なのに雨戸が全て降りている』
 『無人なのに、全然汚れていない』
 どうして気がつかなかった?
 …その事に気がついた途端、頭の中で警鐘が鳴り響く。

 …ヤバイヤバイヤバイヤバイ…

 この館には『何か』がいる。それも人を餌にしている『何か』が。
 血の気が引いて、足が震える。
 館は相変わらずの沈黙を保っているのが恐怖心を煽る。
 この館から逃げて、騎士団や教会に連絡を…
 そこまで考えた所で、視界が暗転した―――――――

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 「それで、どうなったのライラ姉?」
 まだまだ年少の域を出ていないような赤髪の冒険者に急かされる。
 「決まってますわ。館を全て破壊して、悠々と帰宅ですわよ。」
 蒼い髪の冒険者が何か寝言を言ったので、脳天に手刀をくれてやことにした。
 「お主と同じと考えるでないわ、この破壊魔!」
 「〜〜〜〜〜っ!!!!」
 …少し強くしすぎただろうか…とちらりと脳裏をよぎったが気にしない気にしない。…おや?
 
 「やれやれ、どうやら昔話はこれでお終いみたいじゃな。」
 苦笑交じりに話しの終わりを宣言する。
 「にゃんでにぇすか!こにょからイイ所にゃの…」
 ネコミミの生えている冒険者が言い終わる前に、見た事の無い冒険者がこちらのテーブルをぶち壊す。
 荒くれ者の集まる酒場でよくある諍い。
 端的に言うと喧嘩が起こり、酒場全体に広がっていく。

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 アルカディアにあると言う冒険者が集う酒場…。
 そこには…様々な冒険者が様々な用事で訪れる。
 
 「あははははははははは!!」
 「ちょ、僕は関係無いよー!?」
 「…離れておこう…巻き込まれたらたまらないわ…」
 「軽く運動するとするかのぅ…」
 
 奇妙な酒場の夜は更けていく…




 FIN…?


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